ゴーストライターが問題視されるのは、著作者名詐称罪という犯罪になる可能性があるからです。著作権法121条によると、「著作者ではないものの実名やペンネームを著作者としたり、二次的著作物において原著作物の著作者でない者を著作者として表示したりして頒布すること」に罰則を定めています。これは要約すると「ゴーストライターを使うな」「盗作するな」という意味です。1年の懲役、100万円の罰金刑が科せられます。
しかしこの法律には、ある意味で問題点があります。出版、音楽、放送などさまざまな業界に深く関わってくる法律であるのに、あまりにも表現が曖昧であるという問題点です。簡単に言えば、どこからどこまでが許容範囲なのか?ボーダーラインが曖昧でなのです。一般的な常識に判断が託される内容になってしまうので、グレーゾーンが広すぎて判断が難しいのです。
佐村河内氏の騒動は、客観的に見てもかなり悪質なものでした。誰が見ても犯罪でしょう。それ故に表立ってたたかれましたが、実際には同じようなことが平然と行われています。そこまで悪質ではないにしても、「これって許されるの?」と感じる作品はいくらでもあるのです。
たとえば日本を代表するロックユニットの二人組です。ファンの方は不快に思うかもしれませんが、彼らの作品には洋楽のメロディラインに歌詞をのせた楽曲が数多く存在します。中にはAメロからBメロまでそのまんま、なんて楽曲も存在しています。しかし、「何小節の間全く同じなのはダメ」といったような具体的な決まりがありませんので、違法行為として罰則を科すことは難しいのです。
少しゴーストライターから話がそれてしまいましたが、これは彼らのみの問題ではなく、音楽業界では当たり前のことなのです。ただ、芸術の多くは模倣からスタートするとも言われていますので、あまりにも厳しく規制すると新しい作品が生まれなくなってしまいます。ゴーストライターの問題だって、口述筆記が駄目なら手の不自由な人は執筆できませんよね?非常に難しい問題なのです。